――「悪女」の反対語は?
と訊かれたら、
――「悪男(わるおとこ)」?
と答える向きもあろうかと思いますが――
僕は、
――「悪漢」!
と答えるようにしています。
「漢」は「漢民族」の「漢」で――
中国では、古来“辺境の野蛮な男”ではない“国内の文明的な男”という意味があったようです。
そこから転じて、
――立派な男
という意味も併せ持つようになったと考えられます。
つまり、「悪漢」とは、
――悪人ながら立派な男
という意味になります。
この「悪漢」が、たしかに「悪女」の反対語になりうるかどうかは――
そもそも「悪女」の意味が曖昧なので――
判断は難しいところです。
「悪女」には、本来、
――性格の悪い女
という意味と、
――外見が醜い女
という意味との2つがあります
これらに加えて、現代では、
――下心のある男性を手玉にとる女
という意味もあります。
これをより厳密に記述すれば――
おとといの『道草日記』でも述べたように、
――男に性的な関心をもたれやすいものの、男のいいなりにはならず、男を惑わせたり困らせたりする女
となります。
そういう女性は、きっと理知的で行動的でしょうから――
僕などは、
悪女 = 理知的で行動的な女
と、半ば本気で思い定めております。
このように、「悪女」は語義を客観的に定めにくいので――
「悪女」の反対語が「悪漢」で良いのかどうかは、判然としません。
よって、
(むしろ、「悪漢」の反対語が「悪女」なのだと考えるほうが、すっきりするのではないか)
と、僕は思っています。
つまり、
――悪人ながら立派な女
というのが「悪女」ではないか、と――
いいかえるなら、
――悪女は、漢(おとこ)のように立派なところをもっている。
ということですね。
さらに、いいかえるなら――
立派なところを一つも備えていない悪女は、ただの“悪い女”に過ぎない――
ということです。