――悪女
というと――
何だか色っぽいというか、何となく艶めかしい感じがするから――
不思議です。
(悪女って、本当に、そんなに色っぽいか? 艶めかしいか?)
と――
通説を疑うのが大好きな僕は、子どもの頃からずっと、そのように自問しております。
おそらく、「悪女」という言葉の真意は、
――男に性的な関心をもたれやすいものの、男のいいなりにはならず、男を惑わせたり困らせたりする女
といったところでしょう。
近世以前の時代の名残り――世の中のことのほとんどが、男によって決められ、語られていた時代の名残り――
なのだと思います。
純粋に女の視点でみるならば――
悪女は、かなり理知的で行動的な女性のはずです。
少なくとも、「色っぽい」とか「艶めかしい」とかいった印象とは、ずいぶん縁遠いのではないでしょうか。
ですから――
例えば、
――あの女優さんは、悪女役がいいね。
といわれた場合には――
それは、たいてい、同性である女性ファンからの賛辞だそうです。
男性ファンから「悪女役がいいね」といわれることは、滅多にないといいます。
(まあ、そうだろうな)
と思います。