きょうは、ちょっと所用がありまして――
先ほどまで女川(おながわ)におりました。
「女川」とは、宮城県東部の町・女川町のことです。
先週――
天皇・皇后両陛下が視察にお見えになりました。
5年前の東日本大震災では大津波の被害を受け――
町の家屋の過半が失われました。
その後、高台の造成が進み、主要な道筋は描き換えられ――
女川の町並みは、だいぶ変わっています。
以前は――
幾筋もの曲がりくねった小路の両脇に、似たような背丈の家屋が密集している町並みで――
いったん迷い込んだら、簡単には抜け出られそうにない町並みだったのですが――
今は、すっかり見通しが良くなっています。
地元の方々は、
――もう昔の町並みを思い出せない。
と、おっしゃいます。
震災後も女川に残り、復旧・復興に熱心に関わっている方ほど――
以前の女川の町並みを忘れつつあるようです。
おそらく――
女川の町並みが徐々に変わっていく様子を間近でご覧になってきたゆえでしょう。
僕などは――
震災前も震災後も、女川には、たまにしか参りません。
しかも――
前回に訪ねたのは、4年前――
震災の翌年でした。
大津波の被害を受けた後ではありましたが――
まだ以前の道筋が残っていて、人工の高台もなく――
震災前の町並みを思い起こさせるのに十分な情景でした。
それゆえに――
僕などは、今も、以前の女川の町並みを、やけに鮮明に思い出してしまうのですね。
まるで――
あすも女川に行けば、そこに震災前の町並みが残っていると錯覚してしまうくらいに――
今さらながらに――
震災前の町並みを懐かしく思い出すとともに――
(もう2度と、あの町並みには迷い込めないのだ)
ということを――
今、痛感しております。