人工知能は――
僕が大学生であった1990年代までは、はっきりいって、
――いつまでも経っても現実的には役立ちそうにない代物
の典型でしたが――
2016年現在――
状況は様変わりしています。
今後10年のうちに人の職業の過半は人工知能が担うようになると予測されるに至りました。
そして、ついには――
識者らによって、
――2045年問題
なるものが――
声高に警告されるようになっています。
この問題は、
――2045年頃には、ありふれた1台のコンピュータの演算能力が、全人類の脳の演算能力の総和を超えるであろう。
との予測に基づいているようです。
それくらいの演算能力を、コンピュータが備えるようになれば――
そのコンピュータに内蔵されうる人工知能が、人の知性を凌駕した知性を獲得しても不思議はなく――
そういう警告です。
一見すると――
大変に恐ろしい警告なのですが――
この警告は――
どうも、コンピュータの演算能力のみに着目して出されているようです。
人の脳の演算能力については、人の脳が、あくまでも今日のコンピュータと同様の原理で作動していると仮定された上で、見積もられています。
実際には――
人の脳は、今日のコンピュータとは全く異なる原理で作動しているかもしれないのですね。
そのあたりのことを――
そして――
2045年頃になっても、まだ解明できていないかもしれない――
仮に解明できていたとしても、その原理が、その頃のコンピュータで再現されえないかもしれない――
つまり――
今、僕らが真に関心をもつべきは――
今日のコンピュータの演算能力や人の脳の演算能力の見積もり量ではなくて――
人の脳の作動原理が――
今日のコンピュータの作動原理と同質なのかどうか――
あるいは――
その延長上にあるといえるのかどうか――
でしょう。
もし――
人の脳の作動原理が、今日のコンピュータと同質か、その延長上にあるのなら――
たしかに、“2045年問題”は深刻です。
コンピュータの知性が人の知性を凌駕することは――
火をみるよりも明らかです。