組織に関わる人々は――
“一見、有能な指導者”の存在に――
つねに十分に注意をしておくほうがよいでしょう。
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組織の指導者には、少なくとも3種類がある、と――
僕は思っています。
1)組織の実力を十二分に引き出せる指導者――
2)組織の実力を十分に引き出せる指導者――
3)組織の実力を半分も引き出せない指導者――
このうち――
3)の指導者が有能でないことに、とくに異論はないと思いますが――
1)や2)の指導者が有能かどうかについては、慎重な判断が必要です。
一見、2)よりも、1)の指導者のほうが有能ですよね。
が――
実は、1)と3)とは紙一重です。
1)の指導者は、組織の機能を実力以上に発揮させます。
「十二分に」とは、そういう意味です。
ところが――
この「十二分に」は、しばしば組織に大きな歪みをもたらします。
とくに、実力の備わっている組織――指揮系統が整っていて、個々の人員の力量は高く、皆が自信に満ち溢れていて、内部の連携も密にとれているような組織においては――
こうした歪みが、指揮系統の硬直化や個々の人員の不平不満、あるいは内部の不協和音を生み出し、重大な機能不全を引き起こすことがあります。
1)と3)とが紙一重と述べたのは――
そうしたことによります。
1)の指導者は、一見、有能な指導者ですが――
真に有能な指導者ではありません。
1)の指導者が成功をするのは――
たいていの場合――
実力が今一つ備わっていない組織――指揮系統が乱れていて、個々の人員の力量は低く、皆が自信を失いかけていて、内部の連携が疎かになっているような組織――において――
たまたま何らかの幸運に恵まれた時だけです。
真に有能な指導者とは――
1)ではなくて――もちろん、3)でもなくて――2)の指導者――配下の組織に対し、実力以上の機能を求めない指導者です。