誰かに、
――最近、なんだか元気が出ないよ~。
と、オンラインで愚痴をこぼし――
その“誰か”から、
――何いってるの、元気、出しなよ。
と、オンラインで笑顔の画像が送られてきて――
――うん。ありがとう。なんだか元気、出てきた。
と、返事ができるような人は――
二重の意味で心が素直です。
誰かに「元気、出しなよ」といわれて実際に元気になれる素直さと――
そうやって元気になったことを正直に伝えられる素直さと――
……
……
一つめの素直さは無意識的で――
二つめの素直さは意識的です。
このような二重の意味で心が素直な人は――
ふつうは虚構の世界にしかいないものですが――
まれに、現実の世界にもいるものですから――
話が、ややこしくなるのですね。
……
……
なぜ、そのような人が現実の世界にも、まれながら、いるのか――
*
虚構と現実との関係性について――
以下のような原理が指摘されています。
――虚構は現実の模倣ではなく、現実が虚構の模倣である。
この原理は、人間の意志の及びうる全ての事象に当てはまるといえます。
人間にとって――
虚構は、つい真似をしたくなるくらいに、麗しく、美しいものなのですね。
現実は、そうではありません。
たいていは、醜く、汚らしい――
そんな現実の模倣などを――
いったい誰がするでしょうか。
が――
逆は、話が別です。
麗しく、美しい虚構なら――
ときに無性に模倣をしたくなる――
……
……
かくいう僕とて――
もし、二重の意味で心が素直な人間になれるのなら――
(なってみたいものだ)
と――
本気で思いますよ。
……
……
まあ――
(僕には無理だろう)
とも思っていますけれど――