マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

王が義務だけを履行して権利を行使しなかったら

 ――権利と義務とは表裏一体である。

 という話があります。

 わかりにくい話です。

 初めてきく人には――
 どんなに丁寧な説明をしても、なかなかわかってもらえません。

 何とか、わかってもらおうと――
 以下のような例え話を考えました。

 ――王が義務だけを履行して権利を行使しなかったら、どうなるか。

 という例え話です。

 ……

 ……

 王にも権利と義務とがあります。

 権利は――
 毎日、華美な生活を送れる、ということ――

 義務は――
 王国の民の生命や財産を守る、ということ――

 ここで――
 次のように仮定します。

 ――王の権利と義務とは表裏一体ではなく、場合によっては、切り離しうるものである。

 と――

 仮定より――
 王は――
 権利だけを行使し、義務は履行しない――
 もしくは――
 義務だけを履行し、権利は行使しない――
 の2通りの場合が考えられます。

 1つめの場合――
 王が義務を履行せず、権利だけを行使したら、どうなるか――

 この場合は、難しくありません。

 もし、王が、民の生命や財産を守ろうとせずに、毎日、華美な生活を送っていたら――
 王は民の支持を失い、王国は滅ぶでしょう。

 では――
 2つめの場合――
 王が権利を行使せず、義務だけを履行したら、どうでしょうか。

 この場合――
 王は、民の生命や財産は守ろうとするが、華美な生活は送らずに――
 普通の民と同じように質素な生活を送る――
 ということになります。

 そのような王は、民の目には、どのように映るでしょうか。

 はじめの内は、

 ――なんて素晴らしい王なんだ。

 と称賛されるかもしれません。

 が――
 そのうちに、民は不安になるでしょう。

 ――あのように、我々と同じく慎ましい暮らしをしている人が、いざという時に、本当に我々の暮らしを守ってくれるのだろうか。

 と――

 ――王は、王らしく、ちゃんと贅沢な暮らしをさせておかないと、いざという時に、どこかへ逃げ出してしまうのではないか。

 と――

 そのような理由で――
 質素な生活を送る王は、しだいに民の支持を失っていき――
 やがて、王国は滅ぶかもしれない――
 王が権利だけを行使して義務を履行しなかった場合と同じように――

 ……

 ……

「権利と義務とは表裏一体である」という話は――

 この例え話における“王と民との関係性”に象徴されうる――
 と、僕は考えています。