優れた失恋の歌を聴く度に――
深い矛盾を感じます。
(うわ~、いい歌だな~。でも……ね)
という感覚――
あるいは――
酔っていた気分が急に醒めたような感覚といいますか――
……
……
どういうことか――
……
……
失恋の歌は――
その詞に心が動かされれば動かされるほどに――
大きな疑念をもたらすのです。
すなわち、
(こんなに豊かな恋愛の気持ちを巧みに表現できるような人が、なぜフられるのか)
と――
(この歌が本当なら、この歌い手をフった人は、よっぽど偏屈な人だったんでしょう)
と――
……
……
あるいは――
より深刻な疑念です。
すなわち、
(この歌は全てを包み隠さずに表現してはいないでしょう。何か重大なことを隠しているでしょう)
と――
(この歌い手に悪いところがあったからフられたんで、それをきちんと表現してはいないでしょう)
と――
……
……
もちろん――
ここでいう「歌い手」というのは――
その歌を実際に唄っている歌手や音楽家を指すのではなくて――
その歌の詞で描かれている一人称の主人公のことですが――
……
……
まあ――
見かけ上は、歌手や音楽家のことですかね。
……
……
失恋の歌の矛盾で損をしている人って――
いませんかね。