危ない橋は――
危ない橋とわかっていないから渡れるのであって――
危ない橋とわかっていたら――
なかなか渡れないものです。
よって――
危ない橋を渡るときには――
まず第一に、
――その橋を渡らないで済む方法を考える。
というのが肝要です。
では――
どうしても避けられない危ない橋に出くわしたら、どうするか――
……
……
精神衛生上もっとも確かな発想は、
――その橋を危ない橋でないと思い込む。
です。
これができるのなら、それに越したことはない――
が――
自分で自分を騙すことが苦手は人は――
この発想が馴染みません。
では――
どうするか――
……
……
かくして――
一見、非理知的な結論に至ります。
すなわち、
――この世界にある全ての橋について、それらが危ない橋かどうかをいっさい気にしない。
あるいは、
――これから渡らなければならない橋が危ない橋かどうかをまったく知ろうとしない。
です。
この結論は――
まったくもって非理性的で反知性的に感じられるのですが――
一概にそうとは決めつけられません。
鍵を握るのは――
この世界には、どうしても避けられない危ない橋がどれくらいの確率で存在するのか――
という問題意識です。
その確率を無視できないくらいに高く見積もるならば――
その結論は、それほど非理性的でも反知性的でもないのです。