この全宇宙で、生命が存在しているのは――
今のところ、
――地球上のみ
ということになっています。
少なくとも――
それが、宇宙生物学の総意――さらにいえば、全・自然科学の総意――といって、よいでしょう。
この総意に反し――
例えば、地球外生命が存在していることを前提に何かを主張しようとすると、
――自然科学的ではない。
とのレッテルを貼られます。
が――
……
……
もし――
生命が本当に地球上にしか存在していないのだとしたら、
――なぜ地球上だけなのか。
との疑問が生じます。
けっこう深刻な疑問です。
深刻なだけでなく――
自然科学的にも、それなりの意義をもっています。
そもそも、
――全宇宙
と、
――地球上
とを対比させる発想が――
自然科学的には――
危ういのです。
宇宙の空間は、広大です。
その広大な空間のなかで、地球上の空間が占める割合は、ごく僅かです。
ほとんどゼロといってもよい――
そのゼロみたいな割合しか占めていない地球上の空間でのみ、生命が存在しているとするならば――
その“ゼロみたいな割合”の確率に、さらに僅少な確率を乗じた確率で、生命は誕生した、ということになります。
この考えは、自然科学的に妥当といえるでしょうか。
……
……
もちろん――
現時点では、地球外生命の存在が自然科学的には全く確認されていないので――
自然科学的には、
――生命は、“ゼロみたいな割合”の確率に、さらに僅少な確率を乗じた確率で誕生した。
と考えざるをえず――
その意味では、
――自然科学的に妥当である。
といえるのですが――
――本当に、そうなのか。
と疑うことも、また――
十分に自然科学的といえます。
むしろ――
自然科学的に考えたら、
――生命は、地球上だけでなく、広大な全宇宙の大部分で存在している。
とみなすのが当然なのですね。
とくに――
生命が僅少な確率で誕生したとみなすならば――
なおさらです。
“1みたな割合”の確率に僅少な確率を乗じた確率で生命は誕生した、と――
考えるほうが――
自然科学的には、無理が少ないのです。
この、
――1みたいな割合
というのは――
広大な全宇宙の空間に占める地球上以外の空間の割合です。
つまり――
自然科学的に考えたら、
――生命は、地球上で誕生したと考えるよりは、地球上以外で誕生したと考えるほうが、無理が少ない。
という結論になるのですね。
……
……
――生命は、地球上の空間で誕生したのではなく、地球上以外の空間で誕生した。
という考え方があります。
いわゆる、
――パンスペルミア説(panspermia hypothesis)
です。
一見――
疑似科学的な考え方なのですが――
広大な全宇宙の空間に占める地球上の空間の僅少性を――
ひとたび意識してしまったら――
(少なくとも「疑似科学的」の一言では片づけられない)
と思えるようになります。