10の10乗メートルの巨視的世界と――
10のマイナス10乗メートルの微視的世界と――
あなたは、どちらに興味を抱くでしょうか。
きのう――
宇宙についての図鑑をみていたら――
そんなことを思いました。
ちなみに――
10の10乗メートルというのは、たしか銀河の大きさくらいで――
10のマイナス10乗メートルというのは、たしか原子の大きさくらいです。
……
……
もちろん――
どちらに興味を抱いてもよくて――
そういう興味の抱き方は――
日常の倦怠に一服の清涼をもたらすものですが――
……
……
僕は――
子どもの頃から――
どういうわけか、
(10のマイナス10乗メートルの微視的世界よりは、10の10乗メートルの巨視的世界がいい)
と思っていました。
10のマイナス10乗メートルの世界は――
ごく近くにあるけれど――例えば、僕の指先の埃の中にもあるけれど――
10の10乗メートルの世界は――
ずっと遠くにある――あの空の遥か彼方にしかない――
つまり――
僕は、
(10のマイナス10乗メートルの世界は卑近だけど、10の10乗メートルの世界は遠大だ)
というようなことを――
無意識に思っていたのです。
……
……
もう少し簡単にいうと――
僕は――
子どもの頃から――
どういうわけか、
(どこか遠くへ行きたい)
と思っていたようなのですね。
……
……
が――
本当に10のマイナス10乗の世界は近くて、10の10乗の世界は遠いといえるでしょうか。
……
……
おそらく――
厳密には、
――遠いとはいえない。
です。
僕の指先の埃の中の原子は――
僕が宇宙空間に占める位置から微細にズレています。
僕の体は、僕の指先の埃の外部にありますので――
一方――
僕らの住む惑星が属する天の川・銀河は――
僕が宇宙空間に占める位置にピタリと重なります。
僕の体は、天の川・銀河の内部にありますので――
よって――
10のマイナス10乗メートルの微視的世界のほうが――
10の10乗メートルの巨視的世界よりも、
――遠くにある。
ということさえ――
いえなくはないのです。
……
……
実際――
今の僕には、
(天の川・銀河のほうが、埃の中の原子よりも近くにある)
と感じられるときが――
たまに、あるのです。