マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

鈍感の美徳

 ――鈍感の美徳

 とでもいうような美徳が――
 あると思っています。

 この美徳は、

 ――謙遜の美徳

 に何となく通底していて――
 具体的には、

 ――あえて鈍感のふりをして相手を立てる。

 あるいは、

 ――あえて鈍感のふりをして周囲の気づきを促す。

 といった意味合いをもっています。

 卑近な例をいえば――

 あの手この手で口説くのに一生懸命になっている相手に――
 そうした手管には全く気づかないふうを装うことによって、

 ――ダメだ、こりゃ……!

 と諦めさせようとする――
 といったことです。

 そんなふうに、あえて鈍感のふりをするほうが――
 口説きを真正面から拒むよりも――
 ずっと波風は立ちにくいでしょう。

 もちろん、

 ――なんて鈍感な人なんだ。

 と陰口くらいは叩かれるでしょうが――
 それで損をするのは一時的です。

 周囲の人たちは、あえて鈍感に振る舞っていることに容易に気づくものですし――
 口説いていた当の相手でさえ、しばらく経ってからなら、

 ――ああ。あのときは、角が立たないように、やんわり断っていたのか。

 と気づくかもしれません。

 ……

 ……

 こうした振る舞い方や態度ないし姿勢を、

 ――鈍感の美徳

 と――
 呼ぶことにしたいと思います。