盛唐の詩人・孟浩然が――
代表作である『春暁』で歌っていたことは――
実は――
現代日本の対抗文化でおなじみの、
――萌え
ではないか――
という与太話を――
きのうの『道草日記』で述べました。
「与太話」などといいながら――
自分としては、けっこう本気で、そう思っていて――
孟浩然の『春暁』は――
少なくとも表層的には、「萌え」という“日常の色恋沙汰”を歌っている、と――
僕は思いこんでいます。
では――
孟浩然の『春暁』の主題が“日常の色恋沙汰”それ自体であるのかといえば――
そんなはずはなく――
主題は、“天下国家の大事”――
具体的には、時の国権による対外政策への批判です。
少なくとも僕には――
そう思えて仕方がありません。
国防と称し、西方や北方の国境へ兵を出し――
そこでの戦禍で、多くの若い将兵が命を落としている――
その現実を暗に糾弾しているのが――
孟浩然の『春暁』ではないか、と――
……
……
この“深読み”の根拠は――
当然ながら、確固たるものではありませんが――
かといって――
まったく薄弱なわけでもなくて――
すなわち――
孟浩然が、その作詩の才を認められ、時の皇帝・玄宗との拝謁を許されているにも関わらず――
その後の任官に結び付かなかったばかりか――
拝謁の際に、どうも皇帝・玄宗の不興を買っていたらしい――
との史実によります。
孟浩然は――
おそらくは、皇帝・玄宗の人となりが、どうしても好きになれなかったのでしょう。
その発露を――
僕は、『春暁』の主題にみているのです。
すなわち、
――若い将兵の命であがなわれる泰平というのは、何かが間違っている。
との疑念です。
その疑念が皇帝・玄宗の人となりへの懐疑となって結実していたのではないか、と――
僕は思っています。