マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

「春眠、暁を覚えず」の深読み(6)

 盛唐の詩人・孟浩然が――
 代表作である『春暁』で歌っていたことは――
 実は――
 現代日本の対抗文化でおなじみの、

 ――萌え

 ではないか――
 という与太話を――

 きのうの『道草日記』で述べました。

 「与太話」などといいながら――
 自分としては、けっこう本気で、そう思っていて――

 孟浩然の『春暁』は――
 少なくとも表層的には、「萌え」という“日常の色恋沙汰”を歌っている、と――
 僕は思いこんでいます。

 では――
 孟浩然の『春暁』の主題が“日常の色恋沙汰”それ自体であるのかといえば――

 そんなはずはなく――

 主題は、“天下国家の大事”――
 具体的には、時の国権による対外政策への批判です。

 少なくとも僕には――
 そう思えて仕方がありません。

 国防と称し、西方や北方の国境へ兵を出し――
 そこでの戦禍で、多くの若い将兵が命を落としている――

 その現実を暗に糾弾しているのが――
 孟浩然の『春暁』ではないか、と――

 ……

 ……

 この“深読み”の根拠は――
 当然ながら、確固たるものではありませんが――

 かといって――
 まったく薄弱なわけでもなくて――

 すなわち――
 孟浩然が、その作詩の才を認められ、時の皇帝・玄宗との拝謁を許されているにも関わらず――
 その後の任官に結び付かなかったばかりか――
 拝謁の際に、どうも皇帝・玄宗の不興を買っていたらしい――
 との史実によります。

 孟浩然は――
 おそらくは、皇帝・玄宗の人となりが、どうしても好きになれなかったのでしょう。

 その発露を――
 僕は、『春暁』の主題にみているのです。

 すなわち、

 ――若い将兵の命であがなわれる泰平というのは、何かが間違っている。

 との疑念です。

 その疑念が皇帝・玄宗の人となりへの懐疑となって結実していたのではないか、と――
 僕は思っています。