マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

感情の安全保障(1)

 ――人の発言や行動を操作するには、その人の感情を操作すればよい。

 といわれています。

 たしかに――
 その通りでして――

 もし、ある人の感情を自分に都合よく変化させられたら――
 その人は、あとは、その感情に突き動かされることによって、自分に都合よく発言したり行動したりしてくれるものです。

 まことに恐ろしい原理といえます。

 この原理を熟知する者が――
 人の発言や行動を意図的に制御しうる危険性は――
 不可避です。

 人の世で生きる以上――
 そうした危険性に誰もが常に晒されています。

 ……

 ……

 発言や行動を意図的に制御しようする悪意から――
 いかに身を守ればよいのか――

 ……

 ……

 難しくはありません。

 自分自身の感情を守ること――
 それに尽きます。

 自分の感情が誰からも操作されないように気を配るのです。

 あなたの感情を操作しようとする者は――
 多くの場合――
 その者自身による特徴的な発言や行動で、あなたの感情に訴えてきます。

 人の感情を操作しようとする者の発言や行動は――
 多分に感情的であり、かつ暗示的で非合理的です。

 例えば――
 誰かが、あなたに近づいてきて――
 何とはなしに、感情的で、暗示的で、非合理的な発言や行動を始めたら――
 要注意です。

 ――私の感情が狙われている!

 と思って最大限に警戒をするのがよいでしょう。

 具体的には――
 相手の発言や行動の感情的なところ、暗示的なところ、非合理的なところを見出し――
 明確に意識することです。

 明確に意識することで――
 相手の意図を把握することができ――

 相手の意図を把握することで――
 いわゆる「興覚め」の心理が働いて――
 あなたの感情が変化するのを防ぎます。

 つまり――
 あなたの感情の安全が保障されるのです。

 このような警戒を――
 とりあえず、

 ――感情の安全保障

 と呼びましょう。

 感情の安全保障は――
 発言や行動を意図的に制御しようとする悪意から身を守るだけではなくて――

 対人関係のトラブル全般を予防する上でも――
 有効な発想といえます。

 対人関係のトラブルの多くは――
 自分の感情が変化しているにもかかわらず――
 そのことに気づき損ねて――
 不要な発言や余計な行動をしてしまうことで起こるからです。