マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

相手優先の愛、自分優先の愛

 恋は、感情ないし情動である一方――
 愛は、意志ないし意思ですから――

 恋と比べると――
 愛は、自分自身で意識しやすく、かつ制御しやすい心の働きといえます。

 が――
 愛には、少なくとも大まかにいって2種類があって――

 それら2種類の愛を混同すると――
 大変に厄介です。

 2種類の愛とは、

  1) 自分よりも相手のことを優先する愛
  2) 相手よりも自分のことを優先する愛

 の2種類です。

 ……

 ……

 こうして文字に表してしまうと――

 1)の愛と、2)の愛とでは――
 雲泥の差があるように感じますね。

 1)は、相手優先の愛――
 2)は、自分優先の愛――

 そう読めます。

 ……

 ……

 他にも、

 ――「自分よりも相手のことを優先」って、そんな愛し方ができれば、苦労はしないね。

 とか、

 ――「相手よりも自分のことを優先」って、そんなんじゃ、愛とはいえないんじゃないの?

 とか――
 色々なことを考えます。

 ……

 ……

 要するに――

 相手優先の愛は荘厳的で気高くて、自分優先の愛は打算的で卑しいように感じられる――
 ということです。

 ……

 ……

 たしかに、その通りと思うのですが――

 僕は――
 愛が少なくとも2種類に分けられるということは――
 重大な気づきをもたらしてくれる、と――
 考えています。

 その気づきとは――

 人には、どういうわけか――
 相手に相手優先の愛を課し、自分に自分優先の愛を許す――
 そういう傾向がある――
 ということです。

 つまり――
 「相手自身よりも自分を優先して愛するのが当然ではないか!」といって、相手を詰り――
 「相手よりも自分自身を優先して愛してしまうのは仕方がない」といって、自分を慰める――
 それが、

 ――人の性

 である――
 ということですね。

 ……

 ……

 たしかに――
 相手優先の愛は本物で、自分優先の愛は偽物に感じられます。

 だからといって――
 本物の愛だけを「愛」とみなし――
 偽物の愛は「愛」とはみなさない――
 そういう発想に立つと――
 厄介なトラブルを招きます。

 愛を息苦しく感じてしまうでしょう――相手も、自分も――

 ……

 ……

 実は――
 相手優先の愛も自分優先の愛も――
 どちらも愛であることに変わりはないのです。

 むしろ――
 相手優先の愛は困難であり――
 自分優先の愛は容易であることに――
 僕らは注意を向けることです。

 つまり――

 いきなり――
 無理をして自分に本物の愛を課したり――
 無理をして相手に容易な愛を許したりしなくてもよい――

 まずは――
 軽い気持ちで自分に偽物の愛を許したり――
 軽い気持ちで相手に困難な愛を課したりしないようにする――

 それくらいの発想に立った上で――
 愛を始めてみたらよい――

 そう思います。