マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

政治の自然

 ――政治

 といいますと――
 自然・不自然の話とは無縁のようですが――

 実際には――
 そんなことはなく――

 どの国の政権も――
 のっぴきならない自然と、常に対峙しています。

 どんな自然か――

 ……

 ……

 ――世論

 という自然です。

 世論は――
 国民の多数派の意見や態度、判断です。

 そうした意見や態度、判断は――
 国民の集団心理を色濃く反映しています。

 その集団心理の感情的側面は――
 しばしば、

 ――国民感情

 と呼ばれ――
 政権指導者らが細心の注意を払って制御しようと試みます。

 人の感情は自然です。

 それら人の感情が集まって互いに相乗効果を及ぼし合い、しだいに形成されていく感情の集合――
 すなわち、

 ――集団心理の感情的側面

 も、また自然です。

 民主主義の国は、もちろん――
 民主主義でない国でも――
 ひとたび世論が政権を攻撃し始めれば――
 政権は瓦解します。

 それは――
 民主主義の国では――
 政権指導者らの失職を意味しますが――

 民主主義でない国では――
 しばしば政権指導者らの死を意味します。

 よって――
 政権指導者らは、必死になって世論と対峙し、国民感情を制御しようとするのです。

 政権指導者の日常は――
 思ったよりも自然に親和的です。

 政権中枢の庁舎や宮殿などにこもって――
 ひたすら、

 ――世論

 という自然に向き合う――
 それが、政権指導者らの日常なのですから――

 ……

 ……

 10代の頃――

 ある幻想小説を読んでいて――
 登場人物の一人である皇帝が、

 ――私の仕事は庭師によく似ている。

 と述懐するシーンに出くわし――
 深く感じ入ったことがあります。

 専制君主として、

 ――世論

 という自然と常に向き合っている心境は――
 まさに、庭師のそれでしょう。

 巧みな表現です。