マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

化学進化説への倒錯的な関心

 ――空想まがいの荒唐無稽なアイディアも含めて自然科学である。

 ということを――
 きのうの『道草日記』で述べました。

 ……

 ……

 いわゆる、

 ――生命の起源

 の研究では――
 そうしたアイディアも切り捨てることなく、活かしていくことで――
 例えば、

 ――パンスペルミア説(panspermia hyothesis)

 が生まれたわけですが――
 そうしたアイディアは――
 どうしても、

 ――地に足が着いていない感じ

 を与えます。

 そういう“感じ”を嫌う人たちが――
 念頭に置いている仮説があります。

 ――化学進化説(chemical evolution hypothesis)

 です。

 簡単にいってしまうと、

 ――生命は、地球上の物質が、30億年以上の歳月をかけ、互いに化学反応を繰り返した結果、存在している。

 という考え方です。

 この仮説の全容を説明し始めると――
 途端に話が煩雑になってしまうので――

 この『道草日記』では――
 あえて説明はしませんけれども――(笑

 化学進化説に含まれる一つひとつのアイディアをみていくと――
 いかにも、

 ――地に足が着いている感じ

 が、みてとれます。

 もちろん――
 化学進化説も、発展途上の仮説にすぎず――
 説明のつかないことが、山ほどあるのですが――
 
 少なくとも、21世紀前半の現時点では――
 自然科学的に最も正統性の高い考え方といってよいでしょう。

 が――

 ……

 ……

 僕は――
 この化学進化説が、
 (どうにも好きになれない)
 のですね。

 4日前の『道草日記』では、

 ――パンスペルミア説が好きになれない。

 と述べたばかりですが――

 化学進化説は、
 (もっと好きになれない)
 のですね(笑

 どこが好きになれないのか――

 ……

 ……

 (もっともらしいアイディアだけで構成されているところ)
 です。

 今日の自然科学が示唆する知見に、できるだけ無理なく基づこうとしている――
 というのが――
 化学進化説の長所であるわけですが――

 同時に、
 (短所でもある)
 と――
 僕は感じています。

 科学研究の現場では、しばしば、

 ――できるだけ無理なく組み立てられた仮説

 というのが扱われます。

 そうした仮説は――
 ほぼ例外なく、

 ――スカッ!

 と気持ちよく否定されるのですね。

 ――もっともらしい仮説があっさり否定されるところにこそ、科学研究の面白さである。

 と主張する人たちもいます。

 僕も、
 (その通りだ)
 と思って います。

 ……

 ……

 今のところ――
 化学進化説は、

 ――もっともらしい仮説

 です。

 ――最終的に「スカッ!」と否定されるの待っているかのような仮説

 といってもよいでしょう。

 いわば、

 ――勧善懲悪の物語に出てくる悪役のような仮説

 です。

 だからこそ――
 僕は化学進化説が好きになれないのですが――

 ……

 ……

 ここまで書いてきて――

 (あれ?)
 と思いました。

 ……

 ……

 (勧善懲悪の物語に出てくる悪役のような仮説?)

 ……

 ……

 今まで――
 化学進化説のことを―― 
 そんなふうに意識したことはありません。

 ……

 ……

 (ひょっとすると、僕は化学進化説に倒錯的な関心をもっているのかもしれない)

 今――
 そんなことを思っています。