マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

今川義元のこと(13)

 今川(いまがわ)義元(よしもと)のことについて――
 この『道草日記』で連日、述べてきました。

 今川義元は歴史の人物です。

 そして――
 歴史は人文や社会の教材です。

 さて――

 僕らは――
 今川義元のことを教材にして――

 いったい何を学べばよいのでしょうか。

 ……

 ……

 難しい質問です。

 ……

 ……

 もちろん――
 とりあえず簡単に答えることはできます。

 4日前の『道草日記』で述べたように――
 今川義元が、卓越した軍略家であった雪斎(せっさい)を失って、なお領土の拡張に乗り出したのは、

 ――今川義元に人を見る目がなかったから――

 とか、

 ――自分の軍略の才覚を過信していたから――

 とかいった理由が考えられます。

 そのような理由を受け入れるならば――
 今川義元から何を学ぶべきかは、簡単に答えられます。

 ――人を見る目を養え。

 とか、

 ――自分の才覚を過信するな。

 とかいったことです。

 が――
 僕は、今川義元には人を見る目があったし、自分の才覚を過信することもなかった、と――
 考えることにしています。

 そんな僕にとって――
 今川義元から学ぶべきこととは何か――

 ……

 ……

 僕は、

 ――人は、しばしば合理的に間違える。

 ということであろう、と――
 思っています。

 ……

 ……

 ――合理的に間違える。

 とは――
 どういうことか――

 ……

 ……

 ――事実に基づき、論理を組み立てた結果、間違える。

 ということです。

 ふつう――
 事実に基づき、論理を組み立てれば――
 間違えることはない――
 とされます。

 が――
 それは、ウソです。

 事実に基づいていても――
 論理を組み立てていても――

 人は、間違うときは、間違います。

 なぜか――

 ……

 ……

 基づく事実を自分の都合に合わせて無意識に取捨選択したり――
 組み立てる論理の前提を自分の思い込みで決定したりするからです。

 ……

 ……

 もう少し――
 かみ砕いて述べましょう。

 ――合理的に間違える。

 とは――

 喩えるならば――

 外れにしかたどりつけないアミダくじを自分で作り――
 そのアミダくじを正しくたどることに細心の注意を払う――
 ということです。

 ――基づく事実を取捨選択する。

 とは――
 アミダくじの横線を加えることに相当します。

 ――組み立てる論理の前提を決定する。

 とは――
 アミダくじの縦線を引くことに相当します。

 人は――
 合理的に考える前に――つまり、アミダくじの縦線を引き、横線を加える前に――
 どの縦線の下に外れをつくり、どの縦線の下に当たりをつくるか――

 まずは、それを――
 必ず決めておかなくてはならないのです。