マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

2020年3月現在の“鬼”

 ――鬼

 とは、

 ――人ならざる者

 ないしは、

 ――人知を超えた知

 である、と――

 きのうの『道草日記』で述べました。

 

 そのような概念は――

 現代科学の知見に基づけば、

 ――想像の産物

 にすぎません。

 

 一笑に付されることでしょう。

 

 が――

 現代科学が今日のように発展する以前の“世”にあっては――

 “鬼”の存在は切実であったに違いありません。

 

 典型例は、

 ――感染症

 です。

 

 ……

 

 ……

 

 2019年12月――

 中国の湖北省武漢市で新型のコロナ・ウイルスの集団感染が発生しました。

 

 そのウイルスは――

 2020年3月現在――

 日本を含む世界各国に広がりつつあります。

 

 その際に――

 しばしば用いられる語句があります。

 

 ――コロナ・ウイルスとの戦い(the fight/battle against the coronavirus)

 という語句です。

 

 この表現は――

 実は、おかしいのです。

 

 相手はウイルスですから、

 ――戦い

 というのは、おかしい――

 百歩ゆずって、それは比喩表現であるはずです。

 

 その「戦い」は――

 比喩表現を用いずにいえば、

 ――人体の集合への連鎖的な感染に対する処置

 です。

 

 が、

 ――コロナ・ウイルスとの戦い

 という語句が奇異に感じられている様子は、ほぼありません。

 

 なぜか――

 

 ……

 

 ……

 

 ウイルスは、

 ――鬼

 だからです。

 

 もちろん――

 ウイルスは――

 現代科学の知見に基づけば、

 ――人ならざる者

 どころか、

 ――単なる物

 であり――

 これを生き物とみなすことにさえ、幾つかの注釈を要します。

 

 当然ながら、

 ――人知を超えた知

 が備わっているとみなすことは、難しい――

 

 が――

 そんな概念を念頭に置いて――

 例えば、世界保健機関World Health Organization)の幹部が、大真面目に、

 ――この戦いに勝利するために――

 という――

 

 2020年3月現在――

 いわゆる新型コロナ・ウイルスは、十分に、

 ――鬼

 とみなせるでしょう。

 

 現代科学が今日のように発展していてさえ――

 ウイルスは“鬼”なのです。

 

 そして――

 その“鬼”は今日、十分に恐れられている――

 

 現代科学が今日ほど発展していなかった近代以前、

 数々の疫病の原因が、切実な“鬼”であったに違いないことは――

 あきらかです。