マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

ケレン味――わかる人には1回でわかる

 ――ケレン味は多様であるがゆえに、その趣向ないし嗜好の共有は困難である。

 ということを、きのうの『道草日記』で述べました。

 

 簡単にいうと、

 ――ケレン味の共有の期待は無理――

 ということです。

 

 このことは――

 ケレン味を論じ、あるいは、ケレン味を扱う者は――

 肝に銘じるのがよいでしょう。

 

 決して――

 自分のケレン味を押し付けることで、誰かのケレン味を押し潰したり、搔き消したりしないようにすることです。

 

 では――

 

 誰かのケレン味を押し潰したり、掻き消したりしないようにするには――

 どうしたらよいのでしょうか。

 

 ……

 

 ……

 

 まずは、

 ――そのケレン味を真剣に感じてみる。

 ということです。

 

 よくみて、きいて、さわって――

 必要があれば、においをかいで、あじわってみる――

 

 五感をフルに使って真剣に感じてみることです。

 

 そして――

 たとえ良さがわからなくても――

 1回では諦めないことです。

 

 2回、3回と感じてみる――真剣に感じようとしてみる――

 

 ……

 

 ……

 

 僕の経験では――

 だいたい3回目くらいから、だんだんわかってきます。

 

(ああ――これが、このケレン味の良さなんだなぁ)

 と――

 

 ……

 

 ……

 

 わからないケレン味のわかりにくさというのは――

 おそらく、本家本元の歌舞伎のケレン味――外連(けれん)味――が典型です。

 

 大がかりな舞台装置を用いた仕掛け物や――

 役者が一瞬で着替えてみせる早変わり――

 ワイヤーに吊るされて空中を舞う宙乗り――

 

 ああした外連の良さは――

 1回みただけでは、なかなかわかりません。

 

 2回、3回と繰り返しみてみなければ、何がよいのか、全然わからない――

 

 もちろん――

 わかる人には、わかるのです。

 

 わかる人には――

 たった1回であっても、よくわかる――

 

 2回、3回と繰り返しみなくても、よくわかる――

 

 そして――

 歌舞伎の外連についていえば――

 その良さが1回でわかってしまう人の割合は――

 たぶん、大人より子どものほうが高いのです。