――もし、ロシア政府の最高指導者が、少なくとも国益の保持とは無縁の観点から、合理的といえる決断を下し続けているとすれば、その観点の中身を明らかにしておく必要がある。
ということを、きのうの『道草日記』で述べました。
そのような観点として――
どのようなことが考えられるでしょうか。
幾つか考えられますが――
一つは、
――自分の歴史認識の正しさの証明の試み
という観点です。
現在のロシア政府の最高指導者は、
――ロシアとウクライナとには歴史的一体性がある。
と考えているようです。
――歴史的一体性
とは、
――歴史的な遺産や運命が同一であること
を指すようです。
一般に――
21世紀序盤の現代において、ロシアとウクライナとは別個の主権国家として存在をしているとみなされていますが――
現在のロシア政府の最高指導者は、
――それは何かの間違えだ。
と主張をしているようです。
つまり、
――ロシアとウクライナとが、一見、別個の主権国家として存在をしているという「間違い」は、ウクライナ政府から国家主権をいったん奪ってしまえば、自然と正される。
という仮説をもっているようなのです。
この仮説の妥当性を示すために――
ロシア政府は今回のウクライナ侵攻に踏み切った――
要するに――
現在のロシア政府の最高指導者は、
――歴史の実験
を行っている――
ということです。
このように考えると――
現在のロシア政府の最高指導者が、少なくとも国益の保持を半ば諦めたかのような決断を下し続けていることの説明がつきます。
少なくとも自然科学においては――
実験に失敗や損失はつきものです。
――“歴史の実験”も同じである。
と、現在のロシア政府の最高指導者は考えているのでしょう。
仮に、今回のウクライナ侵攻に失敗をして、ロシア軍やロシア政府、あるいはロシアの人々が甚大な損失を被ったとしても、
――“歴史の実験”を試みた意義は残る。
と考えているのではないでしょうか。