マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

恋と愛とは繋がっていない

 ――恋(こい)

 と、

 ――愛

 とは根本では繋(つな)がっているけれども――

 よく調べてみると、少なくとも表向きには繋がっていないことがわかる――

 と、おととい、のべました。

 

 具体的に、のべましょう。

 10 才くらいの男の子の話です。

 

 その男の子は、運動も勉強も、よくできました。

 学校では、クラスのみんなから、一目をおかれる人でした。

 

 けれど――

 ちょっと、やさしくないところがあって――

 運動や勉強ができない友だちのことを、軽い気持ちで、からかってしまうことがありました。

 

 そのせいで、クラスの女の子たちからは、よく思われていなかったようです。

 

 その男の子が――

 あるときから急に、ある女の子のことが気になりだしました。

 

 その女の子は、同じクラスの人で――

 そんなに運動や勉強ができるわけでもなく、また、テレビに出てくるアイドルみたいにかわいい女の子というわけではなかったのですが――

 その男の子と同じように、ちょっと、やさしくないところがあり――

 思ったことをズバズバと口に出して、みんなを悪い気持ちにしてしまうことが、よくある人でした。

 

 男の子は頭がよかったので――

 その女の子のことを自分が好きになっていることには気づきました。

 

 が――

 なぜ好きになってしまったのかがわからずに、考えこんでしまいます。

 

 ――オレが、あんなやつのことを好きになるなんて、ありえない。

 と自分にいいきかせます。

 

 が――

 そのように自分にいいきかせれば、いいきかせるほどに――

 その女の子の前では、なぜか、ぎこちなくなってしまうのです。

 

 さっきまで、ふつうに同じクラスの男の子と話していたのに――

 その女の子から声をかけられると、とたん耳まで真っ赤にして、だまりこんでしまう――

 

 だから、

 ――恋愛の気持ち

 が、すぐにクラスのみんなにバレてしまいました。

 

 やがて――

 その女の子自身から、

 「あんた、あたしのこと、好きなんでしょ」

 といわれて――

 ついカァとなって、

 「うるせえ、バカ!」

 と、どなってしまいます。

 

 そのあと――

 その男の子と女の子とは同じ中学校へ進んだのですが――

 ついに卒業をするまで一度も口をきかなかったそうです。

 

 『10 歳の頃の貴方へ――』