――算数・数学にも無意識(むいしき)の部分はある。
と、きのう、のべました。
その部分は、かなり小さいのですが――
でも、たしかに、あるのです。
例えば――
どんなところが無意識なのか――
12月25日に挙げた、
1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6 + 7 + 8 + 9 + 10
の計算を使って――
説明をしましょう。
12月25日は、
1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6 + 7 + 8 + 9 + 10
を、
1 + 10 + 2 + 9 + 3 + 8 + 4 + 7 + 5 + 6
と変えて、
11 + 11 + 11 + 11 + 11
= 55
と計算をしましたね。
ところが――
この計算は、実際(じっさい)には、次のようにされることが、ほとんどです。
1 から 10 までの和
= 1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6 + 7 + 8 + 9 + 10
であり、
1 から 10 までの和
= 10 から 1 までの和
= 10 + 9 + 8 + 7 + 6 + 5 + 4 + 3 + 2 + 1
であるから、
“ 1 から 10 までの和” の 2 倍
= 1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6 + 7 + 8 + 9 + 10
+ 10 + 9 + 8 + 7 + 6 + 5 + 4 + 3 + 2 + 1
であり――
よって、
“ 1 から 10 までの和” の 2 倍
= 11 + 11 + 11 + 11 + 11 + 11 + 11 + 11 + 11 + 11
= 11 × 10
= 110
であるから、
1 から 10 までの和
= 110 ÷ 2
= 55
である――
……
……
実は――
ここまでは意識的(いしきてき)な計算です。
が――
この計算に十分に慣(な)れた人が、
1 から 100 までの和
を求めるようにいわれたら――
どうするでしょうか。
……
……
おそらく、
――“ 1 から 10 までの和” の計算と同じような計算で求められるはず――
と無意識に考えるのです。
その結果、
1 から 100 までの和
= “ 1 から 100 までの和” の 2 倍 ÷ 2
=(101 × 100)÷ 2
= 5,050
と、とりあえず計算をしてしまうことでしょう。
その後で――
次のような計算を意識的にやり直すのです。
1 から 100 までの和
= 1 + 2 + … + 100
であり、
1 から 100 までの和
= 100 から 1 までの和
= 100 + 99 + … + 1
であるから、
“ 1 から 100 までの和” の 2 倍
= 1 + 2 + … + 100
+ 100 + 99 + … + 1
であり――
よって、
“ 1 から 100 までの和” の 2 倍
= 101 + 101 + … + 101
= 101 × 100
= 10,100
であるから、
1 から 100 までの和
= 10,100 ÷ 2
= 5,050
である――
……
……
つまり、
1 から 10 までの和
の計算から、ただちに、
1 から 100 までの和
の計算を思いうかべるところが、
――算数・数学にある無意識の部分
である――
ということです。
『10 歳の頃の貴方へ――』