人と話をしていて、
「もの書きをやっています」
と名乗り出ると、
「どういうものを書いているんですか?」
と訊かれることが多いのです。
困っちゃうのですよね。
――どういうものを?
と訊かれても、ちょっと答えにくい。
「書いているもの」には2種類あります。「書きたいもの」と「書けるもの」とです。
両者が交わっていれば幸せなのですが、そういうことは滅多にないそうです。多くの作家や編集者が指摘するところです。
ふつう、
――どういうものを?
と訊かれれば、「書きたいもの」を答えたくなります。
少なくとも僕はそうです。
正確には、
(「書けるもの」なんか答えたくない)
のです。
――どういうものを?
と訊かれ、「書けるもの」を答えていたら、すごく落ち込むのですよね。
理由は、よくわかりませんが……。
かといって、「書きたいもの」を答えるのもバツが悪い。
僕が今、一番、書きたいものは、たぶんファンタシーですが、ただのファンタシーではなく、僕好みのファンタシーです。
歴史小説風で紀伝体風のファンタシーです。
が、これも、あまり素直には答えたくないのですよね。
書きたいものを、書きたいように書いたりすると、ソッポを向かれたりしますから、やはり答えたくない。
(答えたってしょうがないだろう)
と思ってしまうのです。
というわけで――
――どういうものを書いてるんですか?
という質問を、僕は極力、回避したがっています。
が、全く質問されないのも寂しいし……。
複雑です。