マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

売文

「売文」という言葉がある。
 手元に辞書によると、

 ――(つまらない)小説・評論などを書き、その原稿料・印税によって生活すること――

 とある。

 僕がやろうとしている仕事は、まさに売文だ。

 冒頭で「つまらない」と括弧書きされているのが気になる。
 もちろん、書いている本人は、
(つまらない)
 と思っているわけではない。

 が、たいていの人には、

 ――つまらない。

 と思われる――ほとんどの人が、そのことを覚悟して売文に走るのだろうと、僕は思っている。

 少なくとも――
 売文は、そんなに高尚な仕事ではない。

     *

 よく、

 ――子供に胸を張っていえる仕事に就くのがよい。

 という言葉をきく。

 気持ちはわかる。
 が、売文を選ぼうとしている僕には、遠い異国の話にきこえる。

     *

 ちょっと事情があって――
 昨日、今日と、中学校3年生を相手に授業をした。

 14、5歳の少年少女たちの目をみていたら、
(オレは自分の仕事の中身を、彼らに向かっては話せないな)
 と思った。

 今、書いているものが、そう思わせるのではない。
 いつか書きたいと思っているものが、そう思わせる。

 間違いなく――
 たいていの人には、

 ――つまらない。

 と思われるものである。

 中学生の彼らにも、あと10年くらいしたら、話せる――そういうものである。