――独創性
というと、
――いかに他人と違っているか。
ということだと思っている人が多いようだが――
そうではない。
独創性とは、
――いかに物事に根源に立ち返っているか。
である。
例えば――
独創的な科学研究とは、科学の黎明期の頃の問題意識を起点としている。
独創的な文芸作品とは、文芸の黎明期の頃の自我意識を根本としている。
独創的な政治活動とは、政治の黎明期の頃の目的意識を理想としている。
だから――
人は、独創的であろうと思ったら、常に物事の根源に立ち返らねばならぬ。
科学とは何か――
文芸とは何か――
政治とは何か――
と――
そうした問いを、重ねて問い続けねばならぬ。
そうした思索に価値を見出せぬ人は、独創的にはなれぬ。
が、それで良い。
独創性だけが唯一の美点ではない。
独創的でなくても、成功をおさめた例は無数にある。
だいたい、世の中、全ての人が物事の根源に立ち返っていたりしたら――
社会の効率が悪くてしょうがない。
独創性への脅迫観念からは、自由になっておくべきであろう。