タクシーに乗っていて――
あと少しで目的地というときに、
――カチ
と、メーターが回ると、なぜか、
――がく!
と、くる。
あの感覚は、なぜなのだろう。
いっておくが――
僕は決してカネにミミッチイほうではない。
それが証拠に、37,380円の衝動買いを、平気でしたりする(12月19日の『道草日記』参照
タクシーのメーターが、ひと回りしても、せいぜい100円程度の損である。
37,380円に比べれば、誤差の範囲内だ。
なのに、なぜ「がく!」と、くるのか。
37,380円分の衝動買いは、少なくとも373回分の「がく!」に相当する。
もちろん――
ポイントは対価であろう。
それは37,380円を払わなければ絶対に手に入らないと、わかりきっていることと――
もしかしたら、このままメーターが回ることなく目的地に着くかもしれないという淡い期待――
これを比べたときに、100円弱が37,380円よりも負担に感じられるのである。
この話、細胞の膜電位に似ている。
*
生体を構成する細胞は、細胞膜と呼ばれる膜で囲まれている。
この膜の内外に100mV弱の電位差が生じている(1mVは1Vの千分の1)
乾電池の両鯛の電位差が1.5Vである。
100mVは、その15分の1だから、大したことはない。
が、細胞膜の厚さは約10nmである(1nmは1cmの1千万分の1)
この狭い領域に100mV弱の電位差が生じている。
したがって、もし細胞膜の厚さが乾電池の長さと同じくらいなら、大変である。
乾電池の長さを1cmとしても、約10万Vの電位差が生じることになる。これは送電線のオーダーだ。
*
数字の意味は、割合で考えねばならぬことが多い。