僕は目が悪い。
小学校の頃から、徐々に近視と乱視とが進み――
視力は、今や小数点以下第2位にまで落ちている。
で――
今日、メガネを外して、夜の街を歩いた。
風邪気味だったので、マスクをしていたのだ。
そうしたら――
吐く息がマスクの隙間から漏れ、メガネを曇らせる。
今夜の仙台は氷点下にまで冷え込んでいた。
曇ったメガネで外を歩くのは、マヌケなだけでなく、危険である。
目の前に突然、自転車が現れたりする。
メガネを外すか、マスクを外すか――
これ以上、喉が痛くなるのはイヤだったので――
メガネを外すことにした。
そうしたら――
みえないこと、みえないこと――
曇ったメガネよりはみえるから、そんなに危険ではないけれど――
道の街灯や車の照明が、かなりボヤケて、滲んでみえた。
光る雪の結晶が、そこら中で瞬いている感じである。
綺麗といえば、綺麗な光景だ。
が――
あんなボヤケて滲んだ世界が全てだと思うと、ゾッとする。
メガネのある時代に生まれて、本当によかった。
メガネが発明される前に生まれていたら、僕の世界観は、かなり変わっていたはずである。
僕にとっての世界は、ボヤケて滲んだ未知の危険領域になっていた、多少は綺麗だったかもしれないが――