『奥さまは官能小説家』という本がある(幻冬社文庫、2004年)
タイトルからすると、一見、官能小説風だが――
実はこれ、エッセイである。
作家・内藤みかさんが、御自分の私生活を赤裸々に綴ったものだ。
この本を書店で最初に手に取ったときは、まず驚いた。
そして、次第に何だか妙に嬉しくなってしまった。
内藤さんは、1971年生まれ――正真正銘の官能小説家である。
そして、名前通り、女性だ。
女性の官能小説家が、女性であることを公表し、しかも自分の私生活をエッセイで書いているという話など、他にきいたことがない。
(これは、すごい)
と舌を巻き――
本を手にしたまま、僕は即座にレジに向かった。
で、読んでみたら、このエッセイ――
ユーモアたっぷり――
淀みも嫌みもない。
が――
書かれていることは深刻だ。
学生の美男子と出来ちゃった結婚をし、その夫に殴られ、姑にはいびられ――
近所付き合いになじめず、育児ノイローゼとなり、結局、離婚するも、また復縁し――
人として生きることの大切さが伝わってくる。
で――
今日の朝日新聞(仙台)の『ひと』は、その内藤さんだった。
内藤さんは、今やケータイ小説の「女王」である。
若い女性が対象の恋愛小説でブレークした。
どうして、ケータイか。
ケータイというメディアに文体が合っていた、と御自分で分析されている。
(たしかに――)
と、僕も思った。
ブレークは必然である。
載ったのは、大手新聞の人物紹介欄だ。
が、官能小説家であった事実は、伏せられていない。
伏せようと思えば伏せられたはずなのに――
内藤さんの御性分がみてとれる。