世の中を、ちょっとでも真剣に生きてみるだけで――
良いことが起これば、悪いことも起こる――
悪いことが起これば、良いことも起こる――
そういう人世の真理を、わりと痛切に実感することができる。
本当に――
どちらかだけということは、ないものだ。
良いことに喜べば、悪いことに落ち込み――
悪いことに悲しめば、良いことに舞い上がり――
人世とは、荒れ狂う海原であり――
人間とは、その海原を流される小舟がごときものである。
だからであろう。
仏教の教えでは、
――喜びも悲しみも一瞬で済ませよ。
などと、いうそうである。
たしかに、そうだ。
荒れ狂う海原に揉まれている小舟が、落差を波に揉まれる度に満喫していたら、実に大変そうではないか。
――やってらんねえよ!
と、なるのが自然である。
そういう人生観ないし世界観が、
(実に仏教らしい)
などと、僕は思う。
このような境地に至るには――
とにかく真剣に生きてみる、ということだ。
――真剣に生きてみる。
とは、
――自分が生きたいように生きてみる。
ということである。
人間は、生きたいように生きて初めて、自分の生に責任が持てるのではないか。
自分を犠牲にしているうちは、責任が持てていない――ついつい人任せになってしまっているのではないか――
重要な指標は――
やりたいことをやったときに、満足感が得られるかどうか――だと思っている。
例えば、やりたいことをやっても、虚しさだけが込み上げてくるときには――
今一度、自分の生き方を点検してみたほうが良いのではないか――
そう思っている。