――どんな人生にも、敬意を払えないことはない。
と、本気で思う。
人は――
生きていくだけで、大変だ。
ただ生きているだけで、人は腹がへる。
腹がへると、ツラい。
ツラい思いをしないために――
人は働く。
子を成せば、さらにツラくなる。
腹がへるのは、自分だけではない。
子供も腹をへる。
自分の空腹は我慢できても――
子供の空腹は我慢できない。
子にツラい思いをさせないために――
働く。
さらにムリを重ねて――
働く。
*
先年――
さる名門大学の教授職にある方が――
ぽつりと呟かれたのを、耳にした。
――普通に働き、普通に子供を育てる――それだって、ずいぶん立派なことだと思う。学者の偉業に劣るものではない。
まったく、その通りと思う。