マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

敢えて黙っている勇気

 皆で集まっているのに、誰も喋ろうとする人がいなくて、気まずい雰囲気が広がっている席上で、

 ――敢えて、しばらくは黙っていよう。

 と決断する勇気が必要かどうか――
 最近、ちょっと、わからなくなっている。

 もちろん――
 気まずい雰囲気を払拭しようと、何か当たり障りのない話題を提供するのは、そんなに悪いことではない。

 むしろ推奨されてしかるべき善意であろう。

 が――
 そのように良かれと思ってすることが、思わぬ失敗を招くこともある。

(うわ! しまった!)
 のような失言に、つながったりするのである。

 一度、口から出てしまった失言は、取り返しがつかない。
 いくら取り繕おうと画策しても、結局は徒労に終わる。

 僕は、割と失言が多く、陰で失笑を買うことも珍しくはないのだが――
 多少の身びいきは承知の上で振り返ると――
 いずれも、どうにかして気まずい雰囲気を払拭しようと思い立った上でのことであった。

(こんなことなら、皆で気まずい雰囲気を分かち合ったほうが、よかった)
 などと後悔するわけである。

 だから、最近では、
(そういう席上では、気まずい雰囲気を払拭するのに長けている人に、お任せするのがいい)
 と考えるようになってきた。

 日和見主義の怠惰かもしれない。

 が――
 ただでさえ気まずい雰囲気を、自分の失言で、さらに悪化させるよりは、賢明な決断かもしれない。