マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

新幹線のホームには

 昨日、JR掛川駅から新幹線に乗ったことは、昨日の『道草日記』でお伝えしました。

 そのときに――
 ちょっと気になる――というか、印象に残る――男性の姿を、目にしました。

 どんな男性かというと――
 歳の頃は50~60代――細身の長身で、頭は映画のようなロマンスグレーであり、渋い紺色のコートに身を包み――いかにも毅然とした態度で、ホームの上を静かに歩いている――

 その光景は――
 東京や横浜などの大都市の朝の通勤時間であったなら、なんということのないものでした。

 通勤途中のベテラン企業戦士が、駅のホームの片隅などで、次第に緊張の糸を張りつめつつあるらしい様子というののは――
 そんなに特別ではありません。

 が、実際には――
 東京や横浜などの大都市の朝の通勤時間ではなく、掛川という決して大都市とはいえない町の、休日の昼下がりの時間にみた光景であったのです。

 ――気になった。

 というのは、そのことでした。
 つまり、
(なんで、こんな所で、こんな時間に、あんなカッコなわけ?)
 ということです。

 ちょっと異様に映ったのですよね。
 もう少しリラックスした格好でもいいだろうに、と――
 休みの日の午後なのに、と――

 とくに僕などは、
(さあ、これから「こだま」さんでユッタリと帰るぞ~)
 と、すっかりリラックス気分に浸っていたものだから、なおさらです。

 すぐに気がつきました。

 同じ休日であっても、
(今日は土曜日じゃない。日曜日だ)
 と――

 休みが今日で終わる日なのだ、と――

 そうですね。
 この男性は、たぶん週末だけ自宅に帰る単身赴任の生活なのです。

 自宅は掛川にあって、職場は東京や横浜などの大都市にあるのでしょう。

 つまり、この男性にとっては――
 日曜日の昼下がりこそが、本当の意味での通勤時間なのです、おそらくは――

 新幹線のホームには、他所では、ちょっと見られない日常の一コマが、転がっているものなのですね。