学校の理科の時間で、
――波とはエネルギーが伝わることです。
と説明するのは、そろそろやめにしたほうがいいと思うのです。
せめて、
――波はエネルギーを伝えていると考えられます。
くらいに説明をしておきたい――
波という現象は、子供でも知っています。
それなのに、それをわざわざ難しげな言葉に言い換えて説明したことにするというのは、筋違いです。
だいたい、エネルギーの説明がありませんよね。
それでは半分も説明したことになりません。
そもそも、エネルギーとは何でしょうか?
――そんなの子供でも知っている。
などという人は、現象と概念とを混同しています。
波は現象であり、エネルギーは概念です。
波は自然の振る舞いの一部であり、エネルギーは人間が用いる発想の一つです。
波はみればわかりますが、エネルギーはみてもわからない――そもそも、みることができない――
よって――波を説明するのにエネルギーという言葉を用いるのは、本末転倒なのです。
みればわかるもので、みてもわからないものを説明するから、わかるのであって――
その逆をやっていたのでは、わけがわからなくなります。
ちなみに――
エネルギーという概念を、一言で表すのは困難です。
強いていえば、
――物体や物質がもっている影響力の量
となるでしょうか。
が――
その背景には、物体や物質をひとくくりにしてもよい不思議とか、なぜか影響力を数量化できてしまう不思議とかが、隠れています。
どちらにしても、一筋縄ではいかないのです。
理科の教師は、説明の仕方や説明の言葉を、哲学者なみに吟味するべきでしょう。
少なくとも、
――波とはエネルギーが伝わることです。
という説明に違和感を覚える程度には――
理科とは、元来、そのような教科です。