大学の強みは、
――若い人たちが大勢いる。
という一点に尽きるでしょう。
大学に匹敵しうる学問機関や研究施設は多々あれど――
この点だけは、大学にかなうべくもありません。
では――
若い人たちが大勢いるということは、具体的には何を意味するのでしょうか。
それは、
――未来へ働きかけられる。
ということです。
大学にいる若い人々の多くは、まだ20代です
彼ら彼女らは、僕ら30代の人間よりも10年先の未来にいて――
また、40代の人たちよりも20年、50代の人たちよりも30年、60代の人たちよりも40年先の未来にいるのです。
ということは、
――大学における研究や教育の諸活動は、未来を見据えたものでなければ、はなはだ効率が悪い。
ということになります。
大学は、せっかく20代の人たちを大勢かかえているのですから――
現在のことよりも、未来のことを考えるほうが有意義です。
第一、そのほうが楽しいし、嬉しいでしょう、大学の運営に携わる人々にとっては――
人は皆、次第に老いていき、いつか死にゆく身です。
若い人に後事を託す気持ちは、人として当然です。
裏を返せば、
――大学は、現在のことは、思い切って犠牲にしたほうがよい。
ということになります。
つまり――
現在のことであるならば、何も大学がやる必要はない――
もっといえば――
同時代人に理解される業績を挙げたいのなら――
大学は、大学をやめたほうがいい――
そういうことです。
50年後くらいに、
――ああ、そういえば、あんな大学があって、今もあるっけな。
と思い返されたい大学が――
真に優れた大学でしょう。