単純作業をしていると――
心が和んだりしませんか。
例えば、ひたすら新聞雑誌を束ねていくとか――
もちろん、そういう単純作業ばかりを毎日やっていたら、そのうちにイヤになると思うのですが――
たまにやったりすると、とても心が和むのです。
単純作業をやっているときは、頭の中には何も浮かびません。
何も浮かばないということは――
例えば、悩みとか後悔とか嫌悪とか、そういった負の思考や情念も浮かばないということですから――
つまりは、頭の中を休めていることに等しいのでしょうね。
そういえば――
*
昨日、床屋さんにいってきたのですよ。
そこの床屋さんは、散髪をしながら、いつも色々と話しかけてくるのですね。
「喋りながら散髪するのって、大変じゃないですか?」
とお訊きしたら、
「慣れてますから、喋りながらでも手先や視野には気を配れるんですよ」
とのお答えでした。
つまり――
もし、散髪を黙々とやってしまったら――
自分の頭を不当に休めることになる――
それでは、なんだか申し訳ない――
だから――
散髪中であっても、できるだけお客さんに話しかけるようにしている――
それも、おもてなしの一つであろうから――
そういうお考えなのかもしれません。
たしかに、熟練した床屋さんにとっての散髪は――
単純作業に違いないでしょう。