通勤電車に乗っていて、ときに、
――しーん
と静まり返っているときがあります。
「通勤電車」といっても、仙台近郊の地方都市の通勤電車では、乗客は少ないのですが――
それでも、ひと車両あたり数十人は乗っているわけで――
その数十人が、皆、一様に黙って座ったり立ったりしている光景というのは、よく考えてみたら、かなり不思議なのです。
とくに駅に停車中は、車輪がレールの上を走る音もありませんから、文字通り、
――しーん
です。
なぜ、こういうことが起こるのか――
たぶん、それら乗客のほぼ全員が、常連客だからでしょう。
毎日その時間に、その電車で、職場に向かっている、あるいは帰宅している――
通勤電車では、そういう客だけで占められる可能性が、わりと高いのです。
そうした数十人の常連客の中に、常連客でない乗客が2人でも混じっていたら――
そして、その2人がペチャクチャとお喋りでもしていたら、
――しーん
の沈黙は容易に失せてしまいます。
面白いもので――
そういうときは、ふだんなら物音をたてない常連客までもが、物音をたて始めるのです。
意味もなく上体をゆすってみたり、カバンを開け閉めしてみせたり――
これも集団心理の1つでしょうか。
敏感に変わるものなのですね。