人には、非日常の体験が必須なのだと思います。
つまり――
人が日常を幸せに過ごすためには、定期的に非日常を体験する必要があるということです。
そのために、例えば、旅行に出かけたり、映画や舞台をみたり、遊園地に行ったり、本やマンガを読んだりしているのでしょう。
僕自身の話をしますと――
僕は、非日常の体験をそれほど頻繁には必要としないようです。
とくに、旅行に出かけたり、遊園地に行ったりするということは――
まず必要ではありません。
それは、僕が小説を書くからでしょう。
小説を書くのは、単に小説を読むのとは違って、かなり深い「非日常の体験」なのですね。
僕は、あの深さに満たされているのです。
広さではないのです。
しばしば旅行に出かけたり、しょっちゅう遊園地に行ったりする人たちというのは――
おそらく、求めている「非日常の体験」が広いのです。
色々な気候や風土に感じ入ったり、様々な仕掛けや催しに興じたり――
僕が求めているのは、深みのですね。
1つの虚構世界の奥深くへと分け入ったり、1人の虚構人物の精神内界に沈み込んで行ったり――
だから――
例えば、旅行に出かけたりすると、その地に住み着くことを考えてしまったり――遊園地に行ったりすると、そこで働く人々に興味を持ってしまったり――
もちろん――
旅行に出かける度に、遊園地に行く度に、そんな心境になっていたら、ものすごく疲れてしまいますよ、色々な意味で――(笑
だから、旅行や遊園地を、僕はとくに楽しみたいとは思わないのですね。
それでいいと思っております。