僕が、10代の自分に何かを伝えるとしたら――
何を伝えるでしょうね。
たぶん――
何も伝えないと思います(笑
もしも、10代の僕が相当にツラく苦しい思いをしていたのなら――
今の自分が、
――何かを伝えてやりたい。
と思うのでしょうが――
あいにく、10代の僕は、そんな思いをしておりません。
とくに寂しくなかったし――
とくに恐ろしくもなかったし――
とくに悔しくなかったし――
とくに惨めでもなかったし――
そういえば――
親の期待には、十分すぎるほどに応えていました。
その前に――
親には、十分すぎるくらいに期待されていましたね。
そのことは、僕は親に素直に感謝をしないといけないのかもしれません。
僕は、人に期待をするものではないと、基本的には考えております。
が、それは、あくまで大人が相手のことでありまして――
10代の少年が相手なら、期待するほうが期待しないよりもいいでしょうね――その期待が本人の身の丈にあっているのなら――
で――
僕は、自分の身の丈にあった期待を親から受け続け、その期待に十分すぎるくらいに応えていましたから――
そんな10代の自分に、今の僕が伝えるべきことなど、何もないのです。
強いていえば、
――親の期待に応えてばかりでどうする? もっと自分の我を強く出せよ。
というようなことを伝えたいのですが――
そんなことを10代の自分に伝えても何の意味もないことは、今の僕が痛いほどわかっていることですから――
僕には10代の自分に伝えるものは何もないのです。
たぶん、10代の僕も、30代の自分から伝えて欲しいものは何もなかったことでしょう。
「たぶん」じゃないな。
たしかに、
――何もなかった。
ということを、今の僕は明確に覚えています。
10代の僕は、未来の自分に、ほとんど関心がなかったのです。