マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

無生物や非生命についての思索

 ――生物と無生物との違いは?

 や、

 ――生命と非生命との違いは?

 といった問いかけは――
 生物学や生命科学の最も根源的な動機だろうと思います。

 その答えを求めるならば――
 生物や生命が現れる以前の世界を探求するのが近道でしょう。

 が――
 そのような世界は何十億年も前に終わっているはずなので――
 探求は容易ではありません。

 現代に残る僅かな痕跡を必死に掻き集め――
 問題の核心に通じていると思われる何らかの論点を見出し――
 その論点の周辺において、推論に推論を重ねることで――
 どうにか議論していくより仕方がないのです。

 いま、「生物や生命が現れる」と述べましたが――
 生物や生命が現れる以前は、当然のことながら、生物や生命は存在しなかったわけです。

 ということは――
 無生物や非生命も存在しなかったことになります。

 少なくとも形式論的には、そうなります。

 生物も無生物も存在しない世界――
 生命も非生命も存在しない世界――

 それは――
 生物と無生物とが――あるいは、生命と非生命とが――
 渾然一体となっていた世界でしょう。

 そういう世界について考えるときは――
 生物や生命以外にも、無生物や非生命に、少なくとも生物や生命と同程度の注意を払うことが、必要なはずです。

「生物とは何か」や「生命とは何か」といった問い以外にも――
「無生物とは何か」や「非生命とは何か」といった問いも重要な意味を含んでいるはずです。

「無生物」も「非生命」も「生物」や「生命」に寄りかかった言葉です。

 無生物や非生命についての思索は――
「無生物」や「非生命」といった概念を「生物」や「生命」といった言葉を使わずに表すところから始まるのでしょう。