英語の、
――engineering
と、
――technology
との違いが、わからないと思ったので――
ネイティブ・スピーカーに訊いてみたのですね。
どちらも、「科学的ないし工業的技術」という意味合いだと思ったのですが――
違う言葉が当てられている以上、指し示される意味内容も、ある程度は違うはずです。
すると、
――「technology」のほうが「engineering」よりも意味が広い。
と、ネイティブ・スピーカーはいいます。
あるいは、
――「engineering」は「physics」に基づいている。
と――
なるほど――
たしかに、「bio-technology」とはいっても、「bio-engineering」とはいいませんよね。
試みに、「bio-engineering」という言葉に、どういう印象を持つかを訊いてみたところ、
――人工心臓とか――
との返事でした。
なるほど――
「bio-(生物の)」と「physicis(物理学)」とを無理やり結びつければ、たしかに機械的な人工臓器のイメージに繋がりそうですね。
とはいえ、
――financial engineering
という言葉もあります。
「金融工学」と訳されます。
経済学の数式や概念を駆使し、金融商品を考案したり、それらを制御する技術を考案したりする学問です。
この場合の「engineering」は、「mathematics」には基づいていても「physics」には基づいていません。
このことをネイティブ・スピーカーに問うと、
――「engineering」は手法で、「technology」は結果だ。
と答えてくれました。
なるほど――
それなら合点がいきますね。
つまり、
――「engineering」は技術者が実践するものであり、「technology」は社会全般で享受されるものである。
ということです。
見方を変えると、
――「engineering」は各技術者に固有で私秘的なもので、「technology」は社会全般に普遍的で公共的なものである。
ということですね。
以前から――
「engineering」にまつわる話は、それに携わった技術者の個性が滲み出てくる話を面白いと感じ――
「technology」にまつわる話は、それを受け入れる社会全般の実態に触れた話を面白いと感じていたのですが――
それは、何となく理にかなった印象であったのかもしれません。