きょうは日本国内で皆既日食が観察できる日でしたね。
TVのニュースなどでも、この話題が大きく取りあげられていました。
現代科学は、日食が太陽と月と地球との位置関係で起こることを明らかにしました。
が――
そうした知見が確立される遥か以前には、
――あれは悪魔が太陽を飲み込んだものである。
と考える文化圏もあったそうです。
むしろ、そんな風に考えるほうが当たり前だったのではないでしょうか。
昼間、空の太陽が突然に欠け始めたら、誰だって驚きますよね。
実際、TVの映像で、空が次第に暗くなっていく様子をみせつけられれると、
(そりゃあ、やっぱり恐いわな)
と実感できました。
その場に居合わせた幼児が泣き出した、という話もありました。
この場合、泣き出した幼児の反応は、人として、生き物として、極めて自然なものだったと感じます。
現代科学は、もし太陽から光のエネルギーが降り注がなくなったら、地球上の全生物が生きていけないことを主張します。
わざわざ現代科学によって説明されなくても、地球上の全生物は、その事実をおそらくは本能で察知しています。
ところで――
この皆既日食のニュースよりも大きく取り上げられたニュースがありました。
山口県の防府市で発生した土石流のニュースです。
大勢の方が亡くなったり行方不明になったりしました。
TVカメラの前で、年老いた男性が、やはり年老いた妻の行方がわからなくなっていることを受け、
――いつかは別れがやってくると覚悟はできていたが、まさか、こんなに突然に別れがやってくるとは思ってもいなかった。
といったことを語っていました。
突然の自然現象の前に、人は無力です。
ひるがえって――
もう一度、皆既日食のニュースに戻りますが――
日食も、太古の昔は、まったく突然であったに違いないのですよね。
今でこそ、僕たちは、科学技術のおかげで、何年の何月何日の何時頃に日食がみられるということを、あらかじめ知っておくことができますが――
古代社会に生きていた人たちにとっては、ある日、突発的に太陽が欠け始めるのを見上げていたに違いないのです――なす術もなく――
自然現象は、良くも悪くも、その突発性に心髄があり――
そこにこそ、人は、えもいわれぬ怖れを抱くのでしょう。