マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

努力は大切だけれども

 某出版社が大学生 4070 人にアンケートを実施したそうです。
 そのうちの 43% が、

 ――日本は、努力をすれば報われる社会である。

 という文章を肯定したのだとか――
 つまり、57% は,

 ――努力をしても報われるとは限らない。

 と考えたことになりますね。

 かなり真っ当な考えだと思いますが――
 そのように考えた大学生が 53% しかいなかったというのは、何ともスッキリしない結果です。

 これは訊き方が悪いでしょう。

 ――日本は、報われるためには努力が必要な社会である。

 なら、ほぼ 100% が肯定したと思います。

 まともな人ならば皆わかっていることでしょう。
 努力をしさえすれば報われるというほどに、この世は甘くありません。
 成功には才能や運気も必要なのです。

 が――
 努力をしなければ話にもならない――絶対に報われない――

 それゆえに――
 努力が大切なのですね――どんな場合であっても――

 ところで――
 このアンケートを実施した出版社というのが、子供向けの通信教育で有名な会社なのですよ。

 僕が中学生や高校生の頃から有名でした。
 同級生の何人かが受講していましたよ。

 当然、その教材の中には高校数学も含まれていて――
 その中のいわゆる重要項目として、

 ――「必要条件」「十分条件」「必要十分条件

 の理屈が教えられているはずなのですが――
 なぜ、くだんのアンケートを実施する際に、この理屈が疎かになってしまったのでしょうか。

「努力をすれば報われる」というのは、それを素直に受け取れば、

 ――報われるには努力をするだけで十分である。

 という意味でしょう。
 つまり、

 ――「努力」は「報われること」の十分条件であって、必要条件ではない。

 ということになります。

 そんなわけないじゃないですか(苦笑

「努力」は「報われること」の必要条件であって、十分条件ではありません。

 どんな天才でも、努力をして初めて報われています。
 逆に、天才かもしれないとみなされた人で、努力をしなかったがゆえに、結局は凡才とみなされた人が、大勢います。

 人世の歴史が教えるところです。

 ちなみに――
 高校数学の「必要条件」「十分条件」「必要十分条件」の理屈を習得し損ねている生徒さんは、決して少なくないそうです。

「日本は、努力をすれば報われる社会である」を肯定した47%の大学生の多くは、この理屈を習得し損ねていたのでしょう。

 きちんと習得していれば、迷わず否定するはずです。
 大学生なのですから、人世の機微に少しは通じてきた頃でしょう。

 もちろん、「努力をしさえすれば報われる」と楽観していた大学生もいたとは思いますよ。

 そういう大学生がどれくらいいたのかを調べて欲しかったですね。
 つまり、

 ――日本は、努力をしさえすれば報われる社会である。

 を肯定するのかしないのかを――