最近は、
――脳科学
という言葉が大流行ですね。
僕は「脳科学」という日本語が好きではなく――
よって、この言葉をあまり使わないようにしているのですが――(苦笑
脳を科学的に分析し、考察すること自体は、非常に価値のあることだと考えています。
そうした分析や考察によって得られる知見は、僕たちの暮らしを少なからず幸せにするでしょう。
精神科医やカウンセラーの中には、自然科学が脳の仕組みを解き明かしていくにつれ、自分たちの仕事が減っていく、と心配する人もいるようですが――
杞憂でしょう。
科学が解き明かすのは、あくまでも脳の仕組みです。
コンピュータに喩えれば、ハードウェアやソフトウェアです。
どんなにハードウェアやソフトウェアの内実がわかっても、それだけではコンピュータの使い方はわかりません。
少なくとも、実践的で効果的かつ汎用性のある使い方は、わかりません。
そうした通り一遍でない使い方は、様々なコンピュータを色々な形で使ってみたり、他の人たちが使っている様子を多くみたりしないと、わかりません。
そうすることで、実践的で効果的かつ汎用性のある使い方を体得でき、それを誰かに伝えることができるのです。
精神科医やカウンセラーは、コンピュータ使用のアドバイザーです。
もちろん、ハードウェアやソフトウェアの内実は、できる限り詳細に把握しておく必要はありますが――
精神科医やカウンセラーとしての腕のみせどころは、そうしたことを把握したあとにやってきます。