マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

恋は残酷

 きょうは、おりからの台風で電車の中に3時間ほど閉じ込められました。

 最初は徐行運転をする程度にとどまっていたのですが――
 しだいに、コトリとも動かなくなりました。

 先発の電車が徐行運転に切り変わったために、時間合わせの必要が出たからか――
 もっと直接的に大雨の影響が安全を脅かしかねないとみられたからなのか――
 その辺はわかりませんが――

 僕の近くに座っていた男女2人連れは、見た目では、ともに20歳前後で――
 2人とも髪を金色に染め、破れたジーンズなどの服装で身をかためていました。

 雨が激しく叩き付ける車窓を眺めては、
「まじ、よく降るな~」
 などと、ため息をついていました。

 車内に人が少なかったこともあり――
 2人は、けっこうな大声で喋っていました。

 それで――
 2人が、きょうは初デートだとわかったのですが――
 男性のほうが、
「なんで、こんなに降るかな~」
 などと、あからさまにテンションを下げていたので――
 たぶん、女性のほうから誘った初デートなのでしょうね。

 よくデートに出かける人はご存じでしょうが、

 ――デートは雨の日にこそ――

 という言葉があります。

 腫れている日は、実は、そんなにデートには向かない――
 行楽地に出かけ、ナンヤカンヤと見聞きをする分、お互いの印象が薄まってしまうからです。

 雨の日だと、映画とか買い物とかに行くしかありませんので――
 そのあとで、喫茶店などに入り、ゆっくり話をすることができます。

 お互いの印象を確かめ合う絶好のチャンスです。

 ですから――
 その金髪の男女2人連れも、きょうが絶好のチャンスだったはずですが――
 少なくとも男性のほうは、そんなことは思いもよらなかったようですね。

 やがて――
 男性のほうが、腕を組んで目をつむって黙ってしまいました。

 女性のほうも、一緒になって目をつむるより仕方がありません。

 それをみて、
(初デートでそれじゃぁ、別れたほうがいいんじゃない?)
 などと思いましたが――
 女性に、その気はないようです。

 恋は盲目――
 というよりは――
 残酷――なのですね。