作家の五木寛之さんは、
――他力
ということをいっておられます(『他力』講談社文庫、2000年)
「他力」というのは「自力」に対する言葉です。
つまり、
――他力が大切――
ということは、
――自分の力を恃みすぎるな。
ということです。
もともとは仏教の教えですが――
五木さんは、もっと広い意味で捉えておられます。
社会的地位の高い人ほど、自分の力を恃みがちです。
医師、教師などは、その典型でしょうか。
ところが――
医療や教育の現場では、医師は患者に治してもらい、教師は生徒に教えてもらうのです。
もちろん、
――全面的に治してもらっている。全面的に教えてもらっている。
と主張したりすれば、多くの医師や教師が反発するでしょう。
が――
現場において、そうした局面が少なくとも部分的に存在することは、誰にも否定しようがありません。
いえ――
日頃から注意深く働いている医師や教師ほど、「たしかに治し、教えてもらっている」と肯んずるのではないかと――
僕は思っています。
――そう思っているくらいが、ちょうどよい。
というのが、彼らの真意でしょう。
「他力が大切――」というのは、最後は各人の日頃の心構えを問うているのです。