日頃から生老病死に触れていると――
人は色々なことを考えるようになる――
「だから、お医者さん中には、エッセイとか書く人が出てくるのかな」
医学部への進学を目指して大学受験に励んでいた頃――
ある国語の先生が、授業のあいまに、そのように呟かれことがありました。
当時は、
(そんなもんか……)
と思って聞いておりましたが――
その後――
無事に医学部に進学して、医師になって――
医療の現場に出て――
しょっちゅう生老病死に触れるようになると――
(むしろ逆じゃないか)
と思うようになりました。
“逆”というのは――
――日頃から生老病死に触れていると、むしろ人は、ものを考えたくなくなる。
ということです。
この“考えたくなくなる”が、しっくりこない人は――
それに抗うようにして、あえて色々なことを考えるようになって――
中には、その思いをエッセイなどにまとめるようになる人も出てくる――
そういうことではないかと思うのです。
あいだに“考えたくなくなる”の相が挟まっていることを――
ぜひ見逃さないようにしたいものです。
……
……
え?
なぜ、考えたくなくなるのかって?
……
……
それは簡単――
……
……
つらいからです。