医学部を目指して受験勉強をしていた頃に――
小論文の問題に取りくんでいて、
――医師は人の命を預かる職業であり……。
と書き――
添削の赤字で、
――「医師は人の命を預かる職業」などと安易に書くものではない。
と叱責されたことがあります。
――人の命を預かる職業は、医師以外にも、たくさんある。
というのが理由でした。
先週――
スキーバスの悲惨な事故のニュースを耳にして、
(まったくもって、その通りだった)
と、思いを新たにしました。
人の命を預かる職業というのは――
医師だけではありません。
世間のいたるところに溢れています。
ぜんぜん珍しくない――
この、
――ぜんぜん珍しくない――
という点が、けっこう大切ではないか、と――
僕は思っています。
*
先年――
作家の竹内薫さんの著書『失敗が教えてくれること』(総合法令出版、2014年)に、監修として携わらせていただきました。
そのときに、
――再起不能の失敗は確実に避けるべき――
とのメッセージを盛り込んでいただきました。
全体的な論調としては、
――Nobody's perfect (誰も完璧じゃない)
のサブタイトルが示すように、
――失敗をむやみに恐れるべきではない。
というのが、メインのメッセージでしたから――
「再起不能の失敗は確実に……」云々の話は、論点を鈍らせる恐れがあったのですが――
人の命を預かる仕事が世間のいたるところに溢れている、という実情を痛感したあとでは――
「失敗をむやみに恐れるべきではない」とだけ指摘することのデメリットが気になってしまったのですね。
竹内薫さんや担当編集者の方が僕のこだわりを快く受け入れて下さったことに深く感謝しております。