人は、愛されようとする者と愛そうとする者とに分けられるといいます。
たしかに、その通りですね。
異論はありません。
が――
もし、そこに、次のような前提があるならば――
それには異論を挟みますよ。
すなわち、
――愛されることは楽なことで、愛することは苦しいことである。
という前提です。
そうではないでしょう。
愛されたいならば――
我慢をしなければなりません。
つねに誰かに愛されているためには、自分の心に自由を許してはなりません。
自分を愛してくれている人が、いつまでも自分を愛し続けるように、自分の心を縛り続けなければなりません。
反対に――
愛したいならば、我慢をしてはいけません。
つねに誰かを愛するためには、自身の心を自由に放しておくことが必要です。
愛していた人が急に愛せなくなったら、すぐに誰か別の人を求めて自分の心を遠く馳せなければなりません。
愛することだけが苦しいわけではなく――
愛されることだけが楽なわけではない――
そう思うのです。