マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

本当の幸せ

 通常、組織にゴールはありません。
 組織というのは、特殊な場合を除き、永続が前提です。

 絶縁する予定の家族というのはありません。
 倒産する予定の会社というのはありません。
 閉鎖する予定の学校というのはありません。
 滅亡する予定の国家というのはありません。

 もちろん、家族が絶縁をしたり、会社が倒産したり、学校が閉鎖したり、国家が滅亡したりすることはあります。
 が、それらは、あらかじめ決められたことではなく、期せずして、そうなってしまうだけのことです。

 人生は、そうではありません。

 人にはゴールがあります。

 ――死

 という名のゴールです。

 人は皆、いつかは死ぬのです。
 死ぬ予定のない人は存在しません。

 組織を構成しているのは人です。

 つまり、ゴールなき組織が、ゴールありの人によって購われています。
 数々の人生の積み重ねによって購われている――

 ここに重大な齟齬ないし矛盾が隠れているのですが――
 人は誰も、それを直視したがりません。

 僕も直視したくありません。

 が――
 無視をすることもできはしない――

 そうした齟齬ないし矛盾は――
 組織に一体感を持とうと努力をするときに現れます。

 そうした努力が当たり前となりすぎて、ゴールありの人としての感覚が麻痺しすぎると――
 そのときは幸せかもしれません。

 が――
 いつか、奈落の底に突き落とされるでしょう。

 それよりは――
 ゴールありの人としての感覚を研ぎ澄ますほうが、結局は楽なのです。

 奈落の底から上のほうを見上げているような気持ちのほうが――
 本当は幸せでいられるのです。